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やりたいことがある人の“伴走者”となり、 まちづくりの“ハブ”となるNPO法人「てごねっと石見」。

TEGONET IWAMI

NPO法人 てごねっと石見

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まちのビジネスプランコンテスト「Go-Con」を運営。
やりたいことがある人の“伴走者”となり、
まちづくりの“ハブ”となるNPO法人「てごねっと石見」。

GO GOTSU special interview #03
 

 

「地域再生大賞」というアワードがある。深刻化する地域の疲弊に挑む団体を、地方新聞社と共同通信社のネットワークで取り上げ、エールを送ろうという趣旨で2010年度に設けられた賞で、観光や産業振興、子育て支援、自然保護など多岐にわたる活動分野から団体が選出され、表彰される。

2015年、このアワードの第5回の大賞を受賞したのが、江津に本拠を置くNPO法人「てごねっと石見」だ。

創業支援や人材育成を通じて、地域が元気になる“てご(お手伝い)”をすることが、てごねっと石見のミッション。2016年8月には江津駅前に公共公益複合施設「江津ひとまちプラザ」も完成し、てごねっと石見はその施設を管理しながら、まちの活性化にも携わっていくという。

現場で働くスタッフは20代から30代の若者たち。子育て中のママもいれば、地元をどうにかしたくて東京からUターンした人もいたり、これからの生き方を模索して音楽業界をやめたIターン者、将来地元の群馬でまちづくりをするために修業に来た新卒の女性もいる。人口減少という課題に対し、「帰って来られる島根をつくる」ため、背景も立場もバラバラなメンバーが一つのチームになって、まちを縦横無尽に駆け回っている。

 

プランを抱く人を、支える人たち


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▲2015年度のビジネスプランコンテスト「Go-Con」の最終審査会場。受賞することだけが目的ではなく、「ひととまちとつながる」ことが大きな魅力。

渡辺 諭さん(以下、渡辺さん):てごねっと石見は、端的に言うと、地域の担い手を育成・支援する団体です。今、このまちではいろんな人が活動していますが、そのきっかけの一つが江津市ビジネスプランコンテスト、通称Go-Con(ゴーコン)です。

このまちで活動したいという人や10年後に活躍する人を育てようという想いを根底に、2010年からスタートしました。ある方から「単にGo-Conで受賞させて、“あとは自分で頑張って”ではダメ。プランを提案した人をサポートする仕組みを作らないと、この取り組みは続かない」というアドバイスがあり、そのサポートの役目を担う団体として、理事長の横田や市役所職員が発起人となり、てごねっと石見が設立されました。

 

コンテストの本質は「つながりを創る場」


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竹内 希さん(以下、竹内さん):Go-Conは、表向きはビジネスプランコンテストとして大賞のプランを選定するコンテストなのですが、本質的なところでは「江津でチャレンジしたい」「創業したい」という人たちのお披露目の場であり、つながりづくりの場なんです。出場することで横のつながりができ、仲間ができますし、たとえ受賞しなかったとしても、てごねっと石見などの支援機関がサポートする体制があります

直近2015年のGo-Conは、どのようなものだったのでしょうか。

渡辺さん:大賞を受賞されたのは、江津を流れる「江の川」の流域の観光資源を使ってツアー&ゲストハウスをする運営というプランです。その応募者は、東京でバリバリ働き、ビジネススクールに通い、首都圏で幅広く人脈を持っています。

そういう(東京でバリバリ働いているような)人たちに江津に来てもらって、ゆっくりしてもらいたいというプランです。その他には、廃校になる学校で「森のようちえん」をつくりたいというプランや、フードトラックで飲食店のない集落にも食を届けたいというプラン、外出が難しいお年寄りのために訪問美容をしたいというプランなどが提案されました。プランの分野はさまざまですね。

 

十人十色の提案者の「伴走者」になる


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竹内さん:住まいや出身は問いません。応募者も十人十色で、しっかりしたプランもあれば、手助けが必要なプランもあります。そんな応募者の皆さんの伴走者として一緒にプランを練り、プレゼンテーションを磨いて、最終審査まで走り抜けます。「これは地域を元気にするプランだ」というものがあれば、受賞者に限らず応援していきます。いろいろなプランが実現することが、結果的にまちのためになりますから。

盆子原照晶さん(以下、盆子原さん):Go-Conは、地域課題の解決するプランや地域資源を活用するプランを募集していますが、なかなかとっつきにくい側面もあります。私たちが担うこととして大きいのは、「地域課題や地域資源をプランにどう取り込むか」という点についてのアドバイスですね。それから、プランに合う地元の人を紹介し、プラン立案者と結びつけるというのも大切な役割です。

 

人と人とをつなげ、誰もが楽しく参加できる「まちづくり」のハブを創る


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▲江津駅前の「あけぼの商店街」ではここ数年オープンする店舗が増えており、活気を取り戻しつつある。ビジネスホテルも建設され、2016年夏には駅前に大きな市民プラザもオープンする。

Go-Con以外にどんな活動をされていますか。

渡辺さん:小・中学生向けのキャリア教育があります。たとえば、小学生にプログラミングを教えるロボット・サッカー教室。プログラミングを通して、英語や数学も自然に学んでもらい、将来の産業を担うような人材を育成しようというものです。プログラミングの他には、吹奏楽をやりたい小学生に対して、中学生や市民オーケストラの団員が教えるという取り組みもあります。こうしたキャリア教育の領域には、僕たちは学校と地域の大人や団体とを結びつけるコーディネート役として携わっています。

盆子原さん:もう一つは中心市街地の活性化です。2012年から、「江津万葉の里商店会」の若い商店主に声をかけて、商店会の青年部をつくりました。青年部で「自分たちの手で空き店舗を埋めて、若い人が気軽に来られる店をつくろう」と、コミュニティバーを開いたり、20年ぶりに「土曜夜市」を復活させたりしました。私たちはビルを建てることはできませんが、ソフト事業を通して、人やまちが成長していくことを支援しています。

2016年8月に江津駅前に新しい公共施設ができると聞きました。

渡辺さん:「江津ひとまちプラザ」ですね。その施設には様々な支援機関が入ります。社会福祉協議会や子育てサポートセンター、観光協会などです。また、貸しホール、会議室、キッチンスタジオなど市民の皆さんが利用できるスペースもあります。てごねっと石見は、施設の指定管理者として、「まちづくり」という言葉にピンとこない人でも楽しく参加できる企画や市民大学などを展開していく予定です。

 

「自分は地元に貢献できる仕事に就けたのだろうか?」


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▲(写真:左上)キッズミュージックスクール(写真:左下)駅前の52バーはシェアで運営(写真:右上)ロボットサッカー教室(写真:右下)夏の風物詩のひとつ「土曜夜市」は賑わいを見せた


みなさんがてごねっと石見に参加した経緯は、どんなものだったのでしょう?

盆子原さん:東京で働いていた頃、何か島根に帰るきっかけでもできれば…くらいの気持ちで2012年のGo-Conに応募したら、最終審査まで残っちゃって。コンテストで島根に帰りたいアピールをしまくったら、「君のことは一度、てごねっと石見でどうするか預かる」という話になって。2ヵ月後に副理事長から「就職先が、てごねっと石見に決まりました」とメールが。それで決まりました。

竹内さん:私は群馬県出身です。地元がすごく好きで、いつか自分が生まれた場所を自分で支えたいと思うようになって、その気持ちのまま、東京の大学に進学しました。大学で勉強をして就職活動をして、就職先が決まって、というときに、いざ地元のことを考えたら、「自分は群馬に貢献できる仕事に就けたのか?」と思ったんです。高校から大学までずっとまちづくりの勉強をしていたこともあって、そんなことを考えました。

そんな頃に、いろいろな方との縁でさまざまな地域を巡っていると、江津市に行く機会ができました。江津の人とたくさん会う中で、江津で働くことができれば、江津の良いマインドやつながりが学べ、地元・群馬に生かせるのではないかと思って、てごねっと石見への入社を決めたんです。

渡辺さん:僕は千葉県出身で、大学卒業後、音楽関係の仕事に就きました。仕事は楽しかったんですが、その生活に飽きてしまったんですね。仕事を一通り経験したら、先のことを考え出すようになって。60歳までこの会社で働くのか、とか。そんな時、教育関係の人とつながって、「コミュニティ」の大切さを意識し始めるようになりました。

いろいろな情報を集めていたら、ソトコトで江津にあるゲストハウス「Yurusato」の特集を読んだんです。もう直観で「行かなきゃ」と思って、2014年3月に初めて江津に行きました。その時は遊びに行くという感覚でした。Yurusatoのオーナーに、江津のいろんな人に会わせてもらったんですけど、みなさん生き生きとまちに関わりながら暮らしていて、自分にも何かできそうな気がして。自分で何か成し遂げたいなという気持ちもあったので、すぐに仕事をやめますと伝え、6月に移住しました。移住後は少しフラフラしていたんですけど(笑)、てごねっと石見が人を探しているというのを聞いて、入社しました。

縁もゆかりもない土地への移住には決断が必要だったのでは。

渡辺さん:当時は、自分が何かに踏み出したいタイミングでした。仕事がうまくいっていなかったこともあり、「逃げ出したい」「変わりたい」と。知らない場所でゼロから何かをはじめたかった。江津には、同じような想いを語れる仲間やいろんな人を紹介してくれる方がいたりして、移住するハードルはあまり感じませんでしたね。僕みたいに他所から来た人間にも温かくて、フレンドリーだし。特にYurusatoがそういう場でした。Yurusatoに初めて泊まった次の日に、オーナーに言われて地元のお祭りのテントをたたむ作業をしました(笑)。そういう感じが逆に良かったですね。お客さん扱いされないのがよかった。

 

働くって、身近で、夢を描いていいことなんだ


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江津に移住してみていかがですか。

渡辺さん:よく聞かれるんですけど、「すごく楽しい!」と胸を張って言えます。地域の人からは「都会からこんなところに来てやっていけるか」と言われますけど(笑)。東京だと仕事とプライベートって基本的にきれいに分かれていると思うんですけど、こっちの人って仕事のほかに、地域の活動とか、余暇でもない別の何かに時間を割くんですよ。そういう人たちと暮らしていると、まちのために「もっとこうしたほうがいい、こうやったら楽しくなる」というのが日常茶飯事に生まれてきて、それがとても楽しくて。東京や千葉にいた時と全然違う環境です。

竹内さん:私の場合は大学を卒業して初めての就職先が江津なんですけど、江津で働いているうちに「働くことってすごく身近で、もっと夢を持っていいものなんだな」と思うようになりました。はじめに決まっていた就職先に夢があるのかと考えたら、ちょっと違う気がします。夢を描ける場に自分の身を置ける。江津で働くって、そういう感覚です。

 

GO GOTSU! special interview #03 / TEGONET IWAMI