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高級料亭や高級スーパーが争奪戦! “自然界の理屈”で育てた、 生でかじると甘いごぼう、「はんだ牛蒡」。

HANDA GOBOU

反 田 ご ぼ う

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高級料亭や高級スーパーが争奪戦!
“自然界の理屈”で育てた、
生でかじると甘いごぼう、「はんだ牛蒡」

GO GOTSU special interview #09

 

秋から1月にかけて、首都圏の某高級スーパーに「はんだ牛蒡」という“ブランドごぼう”が並んでいるのをご存じだろうか。

東京の高級レストランや京都の料亭にも高く評価され、料理人からお礼の手紙が届くほどのプレミアムなごぼう。もちろん、何も理由なくもてはやされているわけではない。このごぼう、なんと生でかじると、甘い。ほんとうに美味しいごぼうって、こんな味だったんだ。感動すら覚えるごぼうなのだ。
そんなごぼうをつくっているのが、今回お話しをうかがった反田孝之さん。江津市桜江町田津地区。江津市の中心部を流れる江の川と、その側を走るJR三江線にはさまれ、道沿いにぽつぽつと民家が並ぶ、どこか懐かしい、のどかな集落が所在するエリアに、反田さんの作業場と畑はあった。

 

自然界の理屈で育てる…「自然栽培」というやり方


 

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反田さん:今は、米・大豆・麦、野菜は、ごぼう・人参・サトイモの計六種類を作っています。ちまたでやられている一般的な栽培ではなくて、“いい栽培”を行っています。

“いい栽培”とは?

反田さん:ここ5,6年でようやく分かってきたことなんですが、自然界の理屈で栽培することが、いちばんいい。たとえば、自然界では絶対に肥料は施されない。自然界にはそういう概念はないんです。作物を腐らせる原因は肥料をやるからだと思うんです。肥料をやらないで育てた作物は“腐らずに、朽ちて”いく。

肥料をあげないやり方で育てると、収量が落ちるので、一度は挫折します。今までよかれと思って投入した肥料が田畑に残っている。それらを取り除くには、植えて育って収穫する中で、田畑に残ったものが少しずつ抜けていくのを待たないといけない。その間がしんどいんですよ。収益を上げないとやっていけないので、経営が大変なんです。だから、自然栽培に転換中の畑もあれば、経営のために肥料を蒔いて育てている畑もあります。いかに経営とのバランスをとりながら、目指す自然栽培の割合を増やしていくかが大変難しいところです。その分やりがいはありますよ。

 

「神さまが与えてくれた土地」から、ひとの健康に貢献したい


 

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はじめて反田さんの畑を踏むと、誰しもが感嘆の声を上げる。「こんなに柔らかいのか」と。訪れた人が誰もが驚くその畑は反田さん曰く「神さまが与えてくれた土地」。昔から大雨による水害をもたらしてきた江の川だが、そのお陰で、自然栽培に適した土地になっているという。踏むと、ふわっ、ふわっ、という感触を足の裏から伝えてくれる。この土地なればこそ、穫ってその場で丸かじりできるごぼうができ、反田さんが標榜する「いちばんいい栽培」「正しい農業」ができるのだ。

反田さん:“自然界の理屈”を学ぶなかで、人間の体も同じことが言えると思うようになりました。そういう理屈を知らずに悩んでいる人がたくさんいます。みんな疲れていたり、病気になったり。そういう人たちに“自然界の理屈”を知ってもらって楽になってもらいたいですね。僕らはすごく楽に生きていますよ。会社を経営し農産物を生産していくことで、結果としてそういったことに貢献していけたらいいと思います。

 

“正しい農業”をやってみたい


 

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どのような経緯で、今のようなお仕事をすることになったのですか。

反田さん:私はこの土地の生まれで、家は土木会社をやっていました。子どものころは田舎が大嫌いで、中学生の頃は「早くここを出て行ってやろう」と思っていました。昔から価値観がひねくれていまして(笑)。子どもごころに「ここは俺の生きるところじゃない」「おれは外に出たいんだ」ということで、高校から松江に出ました。その頃は2度と戻ってくることはないと思っていましたね。

高校を卒業したら、子どもの頃から山が好きで林業学科のある大学に行きたかったので、東京農工大学に進学しました。でも林業って、木を植えてから収穫するまで30~50年かかることに気付いて、これはいかんと。私は全部自分でやらないと気が済まない性質なので、一兵卒として森林組合だとか林業会社や行政の農林課に勤めるのも嫌だったんです。

そんな思いで東京にいた頃に、世の中の汚いところもいろいろ見聞きして、世の中をどこまで信じていいんだろうって思うことがあって。自分は“正しい仕事”をしたいなと。山を歩いているうちに日本の山村に触れて、農業もいいんじゃないか、と。「“正しい農業”をやってみたい」と思ったわけです。

 

突然、鳴り響いた“50倍”のオファー


 

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反田さん:実家は土木会社をやっていたので、農業のことは右も左も分かりませんでした。どうしようかなと思っていたら、親父が会社を手伝ってくれと言ってきたので、大学を卒業した後は実家の会社を手伝うことになりました。帰りたくなかった田舎だけど、農業をやるにはいいことがあるかなと思って。

3年半実家の仕事をしたんですが、他のことをする余裕がなく、仕事に忙殺されてしまいました。土木ばっかりの頭になってしまって、「こんなはずじゃない、一念発起して農業の道を歩もう」と、岡山の農業生産法人の社長と知り合い、7か月の約束で研修させてもらって、その後千葉に行きました。千葉は農業県ということもあって、農業の研修をするにはいいだろうと。何でも自分でやりたい性格なので、土地を借りて自己研修を始めました。それだけでは食っていけないので夜に塾の講師をしながら、5年間経ったらなんとかしようと考えていましたね。4年半経ったころに、当時の桜江町役場の人から突然「あんた、千葉で農業やっとるなら、こっちに帰ってやりんさい」と電話かかってきたんです。

農業を始めるときの厳しさは分かっていたので、縁のあるところでやらないと仕方ないなと。だからまた桜江に戻ろうと。それから月に1回、夜行バスでここに帰りながら打合せをしていたんですが、役場から提案されたのは10ヘクタール規模でのスタート。当時、自己研修で0.2ヘクタールだったので、50倍の面積ですよ。

 

「運が良かった」が私の口癖


 

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▲蔵庭の「はんだ牛蒡のペペロンチーノ」。牛蒡の歯ごたえがとても良い。

反田さん:採算はまったくの白紙でした。当時は農薬を使う気がゼロだったので、町中の農家さんからは「農薬を使わないなんて無理だ」と言われたりして。でも役場の人が「反田には秘策があるんだ」なんて言ってね。実際は秘策なんかないわけで、どうしようかなって(笑)。だから育て方をだいぶ勉強しました。

昔からここはごぼうの産地で、当時を知る地域のお年寄りたちは「昔はあんたみたいな(農薬を使わない)栽培だった」と言うんです。昔ここでつくられたごぼうが貨物車で運ばれて、関東の人も知っているというくらいこの土地のごぼうは有名だった。そのくらいの生産量が当時はあったそうです。今考えれば、それは自然栽培だったんですよ。

当時ぼくは自然栽培を知らなかったので、堆肥を使っていました。農薬は使いたくないから農薬不使用の栽培にチャレンジしていたんです。周りからは絶対無理だと言われましたけど。そうやって色々やっていると、次の問題が出てきて。ごぼうが連作できないんですよ。そこで出会ったのが自然栽培でした。「連作できないのは養分供給をするからだ」と、ある勉強会で教えられたんです。2009年から肥料を抜くことを始めたら、肥料が抜けて3年で育つようになって、今では隔年で育つようになりました。

今、ようやく未来が見えている感じです。全国には自然栽培を40年もやっている人もいて、そういう畑はすごいですよ。35年目くらいの畑を見せてもらいましたが草が一本も見当たらなかった。ああいうのを見ると、うちの土は20年後どうなっていくんだろうと楽しみにしています。

いろいろな方に良くしてもらいました。「運が良かった」が私の口癖。本当に運が良かった。本当にいろいろな方に良くしてもらっています。行政のサポートもありがたかったですね。旧桜江町は特に有名でした。黙っていても、行政が町民を引っ張り上げようという風土ができていました。課題が多い地域だからなんでしょう。だから、いろいろなサポートがありました。他の県にいたときは、こちらが動かないと行政は何もしてくれなかったし、それが常識だと思っていました。いざこちらに帰ってみると逆で、そこは本当にありがたかった。

 

日々が発見の連続、“課題がいっぱいだから”楽しい


 

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反田さん:3、4年に一回は洪水に合うんです。種を蒔いて管理していても、収穫間際になって洪水が来てしまう。闇雲に作付けを増やしても、そういったリスクがあるので、今は作付けを減らし、利益率をよくしています。歩留まりも改善しています。

(洪水などの困難は絶えないが)日々が発見の連続で、生きていて楽しいですよ。仕事自体が楽しいということが大きいですね。島根は「周回遅れだからこそトップランナーになれる」というような言う方をよくしていますけれど、課題がいっぱいあって、「課題があることが楽しい!」と感じられる人には本当にいいところだと思います。課題がなくて、毎日満たされたらつまんないですよ。日々の中では「ろくでもない」と思うことも多いんですが(笑)、やっぱりここはいいところだと思うんです。

 

GO GOTSU! special interview #09 / HANDA GOBOU